2024年8月24日土曜日

トルコに来ています

というのは冗談で、他ゼミと合同フィールドワーク(FW)で東京ジャーミイに来ています。ここは、トルコ共和国との縁深き渋谷区のモスクで、もう何回も来ていますが、今年は特に暑かった。代々木上原駅からすぐなのですが、その軽い坂道もしんどいくらいに。

 

モスクに入る学生たち

今回は、ガイドの方が、建物の成り立ちや現況の紹介よりも、イスラム教徒と実際にコミュニケーションをとってみる時間を大切にする、というご方針を立てられたようで、モスク内にいる信者の方々に次々にお声がけしながら「あんたどんなひと?」とインタビューしていく祈りに来ている信者さんにとってはとんでもなく迷惑なツアーとなりました。私たちは楽しかったですけれどね。

インドネシア出身の大学生の方、セネガル出身の小学校3年生のお子さんとそのパパ(バスケットボール プレイヤー)、内モンゴル出身の方、アルジェリア系アメリカ人の方、私はイラン系アメリカ人の方と富士山の登山について熱く話が盛り上がり、というように盛沢山なFWとなりました。 

モスク内でしばらくチャイで歓談し、そのあとはみんなでJICA食堂でご飯を食べて解散。学生諸君、信仰によって結ばれた共同体について良い経験をしましたね。「国籍」とやらを軽々と超えるイスラムのつながりに圧倒されました。

日本では「宗教」というとヤバい人が信じちゃってるヤツとみられがちです(特に若い世代ではそんな思考回路を持つ方が少なくないと思います)。でもそんな方はぜひ新渡戸稲造の『武士道』の冒頭だけでもお読みください。宗教がなぜ必要かが書いてあります。

宗教というのは、なんだろ、善悪の基準だったり、さまざまな倫理的な課題に直面した時の寄る辺となるものなので、グローバルな視点では非常に大切にされているものです。前述の著書で新渡戸稲造は武士道を宗教に変わるモノに見立てて話を展開するのですが、もう日本に武士はいませんから武士道はもはや日本の倫理の基準にはなり得ないことになります。腹を切るのも痛いし、飛び出てくる自分の腸とか見たくないですよ。

それでも、特に既存の宗派が既得権益や公権力と非常に近いことが日本の若い世代をへきえきさせているところもあるようです。宗教社会学の講義時に学生から多くの指摘がありました。宗教が時の権力とこねこねしていた(している?)例が少なくないのは事実なので、曇りなき眼を持つ若い世代にしてみれば、なんとなくうさんくささを感じるのでしょう。若い世代だけでなく、昔から「坊主丸儲け」なんていう良くない言葉もありますね。でもその丸儲けモデルは江戸時代に作られたシステムによるところが大なのでまもなく終焉を迎えると思います。多分に宗教、特に既成の仏教において、精神史的に日本はようやく近代を迎えることになるのでしょう。墓を「人質」とした檀家制度は風前の灯ですし、家を単位とする信仰から個を単位とする信仰へ。そうした新しい信仰のカタチへのメンタルの基盤は「推し活」などが培養器となって育まれる、のかな。個々の価値観に沿い、応える宗教が求められているのでしょうね。

2024年8月10日土曜日

LovE 群馬 ~群馬県立女子大での集中講義を終えました~

上武大学教員時代から非常勤講師としてお世話になっている群馬県立女子大学の集中講義に行って参りました。

夏休み中というのに30名弱の学生さんが熱心に聴講してくれました。途中で群馬県庁とのコラボ企画もあったりで意義深い集中講義になりました。

講義は、公共経営の講義を公共政策にアクセントを置き、政策立案への道筋を明らかにしていく内容です。公務員試験受験者が多いので、教養記述・政策論文の答案作成に効果的な書き方も教えていかなければなりませんが、「公共の溶解」が危惧される昨今、「利他の心」すなわち仏教でいうところの菩提心、 これをもつ方が1人でも多く公務員・NPO職員・ソーシャルビジネス従事者などなどになってほしいという気持ちを伝えるための講義でもあります。結構ドライなキャリア構築についてもお話ししなければならないのですが、根幹は利他の心を持つ公共キャリア志望者の育成です。

9月〆切の共著の内容についても調査することができ、また、毎日、高崎の大きな観音さまにも参拝することができ、 充実の上州路でありました。


軽井沢の小径? 
県女のキャンパスの中です

 

2024年8月3日土曜日

卒業研究中間発表会を終えました

涼しい風が吹いていたような昨日とは一転して、今日は朝から目が眩むような暑さですね。

本日はモチベーション行動科学部経営領域の卒業研究中間発表会が開催されました。

我が研究室の発表タイトルは以下の通り。

・親子で運動イベントプロジェクト ~足立区における運動実施率の向上を目指して~
・若者の宗教への関心を引き付ける密教マンダラの制作
・コミュニティスペースとしての駄菓子屋の考察 ~足立区の事例を基に~
・地域コミュニティにおける和菓子店の機能について~台東区内の事例を基に~
・まちあるきで健康促進プロジェクト
・あだち未来スケッチActionプロジェクト報告書
・地域活動における日本茶文化の継承について -足立区関原地区における事例をもとに-
・千住の銭湯魅力発信プロジェクト
・足立のカフェを繋ぐプロジェクト〜TAMA Coffee Roasterを起点として〜
・NPOによる居場所づくりをとおしての地域活性化について~Do peepsの活動の事例をもとに~

プロジェクトがいつの間にやら大半を占めるようになりましたが、これ、論文を書くのと同じくらい、意外に難しいんですよ。何人もの人と交流・交渉しながら「何か新しい価値」を商品やイベントに付け加えていく、あるいは自ら新しいモノやコトを創造することが求められます。実験やアンケートなどの社会調査でデータを取って傾向を分析するだけではなく、それに加えて、企業や行政などのさまざまな地域主体と協働してプロジェクト(事業)を起こしていかなければならないのです。

たとえば一番上の「親子で運動イベントプロジェクト」。これは足立区の課題である健康寿命の増進と深い関わりがあります。成人病予防ともなる運動習慣。足立区の人びとは運動習慣のないあるいは少ない人が目立つ、こうした地域課題を克服するために、どうすれば短時間で効率的に楽しく運動できるかを考えたあげくたどり着いたのが、

◎子どもの頃から運動する習慣を身につける◎
        ×
◎子どもの運動につきあう形で大人の運動も促す◎

というイベント・プロデュースでした。そして、足立区生涯学習センターとの協働、大学のSNSでの拡散、近隣の小学校等の教育機関への告知…

世の中が必要としているものを調査によって明らかにし、その必要なコトやモノをデザインしてカタチにし、皆さんに提供していく。私の研究室では、こうした調査から得られたデータをデザインして提供するという過程を大切にし、上記のようなイベントだけでなく、新商品開発すなわちプロダクト・デザインも手がけています。

かつて 建築学・都市計画学で学んだ成果がここにきて実ってきていることを実感します。その手法を社会的課題の解決やマーケットが求めているものに転用しながら。

亡き2人の恩師に感謝してもしきれません。

卒業研究のテーマには健康や運動に関わる用語が使われることが多くなりました。今後の社会課題として大切な領域であることは間違いないでしょうね。

発表会が終わり、さて、あとは成績の算出です。学生は休み。いいなぁ!

発表する学生 ここまでしっかりデザイン力が身につくとは!