カンボジアに行ってきました。
以前、カンボジアを訪れたのは大学院修士課程在学中でしたが、数十年の歳月を経て訪れたカンボジアの発展に目を見張りました。
特にアンコールワットをはじめとする遺跡群はとても懐かしく、同時に、現在、ヒンドゥー教の影響の色濃い密教を考察の対象にしている理由の起点の1つであることを感じ取ることができたり、密教を学んだ結果、アンコールワットの遺跡に対する解釈の深化や新たな発見があったりと実りの多い旅となりました。
旅行中に出会ったカンボジアの人びとの笑顔に癒やされました。もちろんバイヨンの微笑みにも。「微笑みの国」はタイの代名詞のように言われますが、その源流はクメール王朝とその末裔であるカンボジアの人びとにあることを確信する旅でした。
ソビャクさん、チョーダさん、現代カンボジア史理解の深化とアンコールワット再解釈に役立つガイディングをありがとうございました。いずれ「復習」しに参ります。
アンコールワットは立体曼荼羅である
往事、「建築馬鹿」だった私は、研究室の性格でもありましたが、プノンペン市内には目もくれずにシェムリアップを目指しました。しかし、現地を理解するための方法としてそれはやはり不十分で、3次元的な比較考察の方法をやはり踏むべきであったと痛感した旅でもありました。地理的、歴史的、制度的な比較考察はフィールドワークの基層をなすものとして非常に重要な作業であり、特にこの国で起きたイデオロギーによる自国民虐殺の歴史は欠落させてはいけないことのように思います。私はその知識を本多勝一氏の『検証カンボジア大虐殺』で得ました。若き日に繰り返し読んだ書の一冊です。
あまりにも克明なこの書はツールスレン(S21)やキリングフィールドについて、その地へ行かずともその地へ行って感得しうる感情を醸成してくれます。行く前に、あるいは行った後、どちらでもかまいませんが「予習」「復習」に資するエスノグラフィのお手本のような書です。今では古本でしか入手できないのが大変残念です。