2022年5月23日月曜日

山形市市街地フィールドワーク

学会発表にあわせて、かねてより予定していた山形市市街地のフィールドワーク(FW)に行ってきました。

もう少し範囲を限定すると、山形市都市計画マスタープランでいう「都心地区」になります。さらに限定するならばその中の「中央」と「東部」。

ちなみに昨日の発表の場、山形大学は「東部」に位置し、上記のマスタープランでは「昭和初期の⼟地区画整理事業により形成された⼾建て住宅を中心とした閑静な住宅地であるとともに、県庁や山形大学、多数の高等学校が位置することで昼間人口が多い地域」と記されています。

一方の「中央」は「行政機関や商業、業務などの機能が多数集積する広域都市圏全体の活動を牽引する地域ですが、近年大規模商業施設の撤退が相次ぐなど空洞化が進んでい」ると記されており、今回のFWはその「空洞化」とそれに対する振興策について見聞する事を目的としました。山形市の総人口はこのマスタープランに記載されている253,832人(2015年)からさらに減少し、244,584人(2022年4月推計値:「山形市現在の推計人口」山形市公式サイト)となっていますから、この点に絞ってみたいと思いました。

帰京までの数時間のワンショットFWなのでかなり限定されてしまいますが、それでも山形市まで赴いたならば、より多くのことを学びたいとの思いで。

さて、マスタープランでは「中央」について以下の記述があります。

「山形城三の丸及びその周辺に発達したまちで、二の丸に囲まれた霞城公園を中心とした城下町の面影を残したまちなみに、明治から昭和初期の近代都市建築の遺産である文翔館、郷⼟館(旧済生館)、まなび館(旧山形一小)などが位置しています。また、歴史的な価値のある「蔵」をリノベーションした山形まるごと館紅の蔵や gura がまちなか観光の拠点となっています。旧羽州街道の沿道には、老舗の歴史ある商店が軒を連ね、風格あるまちなみ景観を形成しています。」

この記述から、今回のFWの目的を「歴史的な遺産という地域資源を観光資源として活性化に寄与できているか」としました。

このブログでは郷土館(旧済生館)をご紹介しておきましょう。郷土館の建物は国の重要文化財でもあります。その印象的な外観はこの通り。

郷土館(旧済生館/竣工1878年9月)

色彩も印象的ですが、何よりも中国の客家の建物のような。

1階は八角形で外観は三層。でも内部は四層で、さらに複雑な多角形平面が織り込まれています。これは明治期の職人の腕による擬洋風建築なのですが、その技術の高さを誇る職人の息吹が今も伝わります。

1階内部の庭園

山形市の公式サイトによれば
「最初は県立病院として使用され、その後、明治21年に民営移管となり、明治37年からは市立病院済生館の本館として使用されました。創建当時は医学校が併設され、オーストリア人医師・ローレツが近代医学教育の教鞭をとったことでよく知られています。

昭和41年12月5日に国の重要文化財に指定され、それに伴い霞城公園内に移築復元の運びとなりました。昭和44年に移築復元工事が完了し、管理棟を付設のうえ昭和46年に「山形市郷土館」として新たに出発しました。

現在、1・2階を一般に公開し、郷土史・医学関係資料を展示しています。」とのことです。

歴史的建造物を地域資源として観光資源化することに成功しているかといえば、建物も展示物も素晴らしいのですが…2階へ上る階段が急な傾斜ということもあって、高齢者の方々は上り下りに苦労されているようでした。とはいえスロープの増設もし難いし、バリアフリーはなかなか難しそうです。階上にのぼる階段がまた見事な造りなのですが、建物の保存という観点からすると、階上を見学ルートに組み込まず、もう少し展示内容を絞って1階に集約した方がいいような気がします。

郷土館だけでなく、霞城公園周辺には足を止めることのできる空間があまりなく、観光客に取ってみればリュックを背負って延々と歩く「苦難の行軍」になりかねません。ひとやすみできる空間あるいはストリートファニチャーを用意してくれるととてもありがたいですね。

でも、霞城公園周辺はマスタープランに従って機能的に整備されていることは確かで、次回、訪れたときには本丸エリアの整備も終わっているのではないかと。今後の計画の遂行が楽しみです。

このような計画の結果、霞城公園周辺が「中央」の観光資源になることは間違いないと思いますが、課題となっている空洞化や人口流出の対策としての効果は薄いような気がします。

観光客を呼び込むにしても、1つ1つの観光資源の間が、車で移動するには近すぎ、歩くには遠すぎる、微妙な距離なので、車でも徒歩でもない移動手段の整備が望まれます。人力車などが風情があって面白いんだけど、車夫の確保が難しいかなあ!山形大学の学生の皆さん、車夫やりませんか?

知恵を凝らせばまだまだできることはたくさんあるはず。

山形市の皆さん、ともに頑張りましょう。