2019年9月28日土曜日

海外での学会発表に向けて

この夏、ブルガリアでの学会発表を流しましたが、雪辱を果たします。先輩教員の勧めもあって春先から準備していたのですが、フルペーパーを今日から起筆します。ドラフトは書いておいたのですが、学会のフォーマットに今日これを流し込みました。

また沖縄か!と言われてしまいそうですが、若き日にこの島の神々に祈りながら、またきっとこの地で、この近くで斃れたであろう沖縄戦の犠牲者に心中で手を合わせながら、フィールドワークをさせてもらった身としては、生涯をかけてその業を全うしたいのです。

私費で研究費を賄わざるを得なかった浪々の身では成し遂げられなかった周辺諸島あるいは他国との比較研究にようやく触わることができます。

近々、島に渡ります。

南国の良さはフルーツが美味なこと

2019年9月24日火曜日

東京都庁は東京都政府

社会科学の事始めは、憲法の統治総論部分。
権力分立について、中央と地方という権力分立概念を説明したところ、熱心にノートを取る学生が複数見受けられました。

東京都庁、高崎市役所、那覇市役所、福井市役所。都庁、県庁、役所に役場。表記に惑わされてしまいがちですが、これらはまごうことなきその地域の政府なんですよね。
中国語表記だと足立区役所は足立区政府と表記されます。時に曖昧に過ごしがちな日本語を鮮明にしたいとき、中国語を参照すると気づきがあります。国際連合ではなく連合国だったり。

もとい。
そう、沖縄県政府と日本政府が米軍基地をめぐってやりあっているんです。地方自治という制度があればこそ、争点が明確になります。人びとが事態を目にすることができるのです。

たとえ話まで含めて一所懸命ノートをとっていた学生諸君。ありがとうございます。語りがいのある講義でした。


上野はアートのまちでもあります
一緒にゴッホ展を観に行きませんか?



2019年9月23日月曜日

恋愛相談

僕を知る方にとってみれば、これほどかけ離れた相談事もないと思われるかもしれませんね笑
ところがどっこい1ヶ月に一回くらいの頻度で恋愛について相談されます。ま、キャリアの概念は広いですからね〜

とあるご相談で遠距離恋愛について私見を聞かれたのですが、僕はよほど即物的なのか遠くにいる人とはダメですねえとお答えしました。結婚などの制度下に入ったものならばまだしも、人と人との関わりはどこにどう流れるかわからないものですから、日々、時時刻刻、その人の姿のみならず、放つ気をも眺めていたい気がします。

と答えながら、これはコミュニティ・デザインにも通じることだと思い至りました。どっぷり浸かる。可能な限り時間と空間を共にする。そうすることで初めて見えてくるものがある。なかふみ、ですね。

コミュニティや地域をスタディすることはその地に恋することに似ています。

足立に、群馬に、沖縄に、タイに、そして福井に。何股かけているんだよって話ですが、自分から関わりを断つことはしないので、まあそうなっています。でも僕はピュアかつ一途なようです。

love and peace

2019年9月21日土曜日

優雅な午後 松方コレクションを観る

さて、今日は通信教育部の卒業式を終えた後、上野の国立西洋美術館に。松方コレクションを観に。

もっと早くに来たかったのですが、最終日間際になってしまいました。価値あるものは価値がわかる人と観たいものです。

地方から人が押し寄せているようなので、向かいの文化会館のオープンテラスで一服。コーヒーの味はイマイチですが、前川國男というコルビュジェの弟子の懐からコルビュジェの作品の全容を観ることができるのがポイントの高いところです。

ストーリーに乗せて把握しようとすると、見えていないモノ・コトまで入れて感じることができるようになります。この空間を堪能しつくし、客がはけたら作品を堪能するようにしましょうかね。


ロダン「カレーの市民」
これも松方コレクションです

以下、補足


いいなあ!と思えば、モネの作品
印象派にアタマやられて帰ってきました


2019年9月20日金曜日

頼もしき教員の卵たち

後期講義は非常勤先の社会科・公民科指導法からスタート。

以前は十数名のクラス構成だったのですが、昨今の好調な企業就職を反映して、数名の少数精鋭集団です。寂しくなった?いえいえ、この数名が意気軒昂でいつも励まされています。

夏休みどうだった?と聞けば、それぞれのフィールドを掘り起こしていて、その報告が面白かったです。大阪のお笑いをフィールドとしている者は何度も繰り返して大阪に入り、あるいは福祉系資格の取得のために長野の山奥で認知症の高齢者とともに過ごしていたり、はたまたバイト先で講義技術を磨いていたり。

この非常勤先の大学の学生とはよほど気質が合うのか、卒業後もつながりを保ち続けている例が多く、このクラスの学生とも同じようになることを確信しつつある昨今です。

講義は常に、いつのまにかソクラテス・メソッドに。今日はガイダンスで全体の講義計画を説明し、模擬授業の順番や内容について決めて終わるはずが、「社会科とは、奈良時代を教えながら現代を語り、熱帯の気候を教えながら生徒がいま生きている環境を教えるもの」の一言から現在の日韓関係と古代の朝鮮半島と日本との関わりについて話が及び、講義時間が延びる延びる。

学生の熱とはよいものです。
大学は学生がこれまで抱いていた価値観や世界観に「コペルニクス的転回」を与える場でなければならないと願っていますが、今日の議論の展開は学生にとってどうだったでしょうか。

大学から受け取るものがあまりにも少なく、大学入学以前と同じような軌道を学生に歩ませているとしたらそれはとても残念なことのように思います。自らの政治的立場を保守と自認する学生がマルクスを読み、あるいは芸術志望の学生がロシア・アヴァンギャルドの解釈から政治に目覚めたり、そうした機会の提供こそが大学の1つのあるべき姿のように思うのです。

このクラスの学生はやがて一教員として、市民として自立していくでしょう。親の助けを借りなくても、教員の助けを借りなくても、独立した一個の人格として自分の人生を切り拓いていく力を身につけるであろうという確信がもてる、そんな熱を彼らから感じながら、互いに議論を深める姿を見入っておりました。

幸先の良いスタートを切ることができたように思います。

教科書もカラフルになったもんだ

2019年9月19日木曜日

後期講義の魅力

さて、本学では学期が始まる前の「全体会議」というイベントで全学教職員の一体感を醸成し、意思の疎通を図ることになっています。それも無事に終わり(FD研修のGW司会役を2年連続とは!)、いよいよ後期講義の始まりです。

今年度の後期講義には魅力が1つ増えます。
それはゲスト講師を呼ぶことです。

渋川での実践以降、僕は「地域活動の谷」世代をどう埋めるかを考え続けています。1つの青写真として学校という枠組に囚われていない若い世代との協働・協創をイメージしているのですが、そうした経験を持つ若い世代の方を僕の講義にお呼びして、経験を共有する機会を持ちたいと考えています。

本学の担当講義・地域マネジメント論でのゲスト講師招聘を考えていますが、それだけでなく、非常勤先の講義でもこうした機会を提供していきたいと思います。

シヴァ神の前で誓った縁、破ると怖い目に遭うだろうなー

2019年9月17日火曜日

スコール、雨宿りゼミ

バックパッカーを始めた学生がいます。
ちょうど時期があったので、数日前に国外で会ったのですが、しばらくすると激しいスコールが。

軒下で雨宿りをすること1時間半。久しぶりに日本語で会話することの伸びやかな気持ちもあったのでしょう、饒舌に、日本を出てから経験・観察したことを話してくれました。いきおいその話は卒論で何を書くのかという話に発展し、雨宿りゼミに。

激しい雷を伴うスコールで、この国でも異常気象として捉えられているようです。

小雨になったあと、軒先を拾いながら、ささやかな会食の場に。
彼の話のなかにあった、これから学びたいことについての強烈なモチベーションは旅の中で育まれたようです。建築家・安藤忠雄氏の言うように旅は学びであるとの確信をあらためて得たのでした。

路傍の蓮

2019年9月16日月曜日

再会

数十年ぶりに親しい仲だった知己に異国で再会し、楽しいひと時を過ごしました。

「教え子」という言い方もありますが、あまり好きな言葉ではありません。親友であり、尊敬する人でありましたが、久しい時を経てやはり彼は傑物に育っていました。

外資系企業で働く彼は、その国、その企業における多文化対応について僕のヒアリング調査に応じてくれたのですが、彼の観察眼に圧倒されながら、予備的な調査を終えることができました。その観察眼をもって眺められている僕はどのように彼の目に映っているのだろうというおそれを感じつつ。

僕は彼がニューヨークに単身渡るときに自分ができる範囲内での便宜を図り、杓子定規な対応でその自由を制することはなかったのですが、彼がその旅で得た友人と今なお交流を保っていることをその経緯とともに聞き、若い世代の前向きな気持ちはできるだけ掬うものだということを改めて思い至った次第です。

稚気、愛すべし。

ローカルなカフェ、ヒンドゥー教寺院、美味しい現地料理の店、マーケット、スタバ、共に過ごした時間と空間は生涯忘れ得ぬ記憶になるでしょう。

この調査、まだまだ続きますので、彼との濃い交流が地層のように蓄積されていくことは疑いありません。楽しみです。


現地の言葉を自在に操る彼に注文を任せながら


2019年9月10日火曜日

講演やります!

みなさん、こんにちは。

10月4日(金)に「ものづくりに生かそう!女性のチカラ」というタイトルで、僅少ではありますがこれまでの私の経験を皆さんと分かち合う機会を「講演」というかたちでいただきました。ありがたいことです。

これまで足立区で手がけてきた産学公金プロジェクトに男女共同参画やジェンダーの話を絡めながらお話ししたいと思います。

男性が女性を語ることについてのバイアス
これがいつも心配

2019年9月7日土曜日

地域マネジメント学会理事会が開催されました

明治大学において今年度第2回目の地域マネジメント学会理事会が開催され、今年度の学術大会に関する報告ならびに議案をご審議いただいて参りました。

研究室の趣旨に沿う学会ということで、僕はこの学会をとても大切にしています。今年、あるいは来年から、ゼミなどの学生の参加を促していきたいと考えています。

今後、学術編集委員会の委員長を代行することになり、学会の仕事が増えることになりますが、この学会の発展に尽くしたいと思います。

公務員など、公共を仕事にしようとなさっている皆さん、うちの学会に参加しませんか?心から歓迎いたします。今日もNPO志望の学生の入会が承認されました。

白雲なびく駿河台♪に行って参りました

2019年9月6日金曜日

共著『多文化社会を拓く』が発刊されます

構想から一年余。
共著書が完成し、納品されました。執筆者に加えていただいた先輩教員・研究者、ムイスリ出版の方々に厚くお礼申し上げます。

日本はもうすでに多文化社会。というかずっと昔からそうだったわけなのですが。
外国人の急激な増加への戸惑いからか、対処の方法が騒がれているようですが、それをどのようにコミュニティでこなしていくのか、本書はその処方箋を示しています。

すでに多文化社会を迎えているコミュニティ、これから迎えるであろうコミュニティ、いずれにもこの書が届いて欲しいと思います。まずは若い世代へ向けて、すでにいくつかの大学で教科書として使われる予定です。

以下、僕が書いた「おわりに」を示し、本書の紹介としたいと思います。

「日本の多文化社会化は必然である。

私たちは古来より、他国との人の往来、文物の交換をなして、この社会を形成してきた。いわゆる『鎖国』の時代にあっても、他国とのつながりは維持し、そのつながりのなかでこの社会を営んできた。大局に立てば、日本は常に多文化社会だったと述べても過言ではなく、それゆえに冒頭で『必然』との言葉を用いた。

いま、『多文化社会』がことさら現代日本の課題のようにいわれているのは、交通・運輸の革命的な発展によって人の往来が爆発的に増え、その量的な拡大に対する対応が急がれているからに過ぎない。『平成』から『令和』への画期に歩みを揃えるように、政府は外国人材の活用へと政策を大胆に切り替えた。私たちは叡智を集めて、この変化を受け容れなければならないだろう。

そのときに顧みたい歴史がある。異なる文化を権力の作用によって浄化あるいは同化してきた歴史だ。特に、アイヌ(ウタリ)の文化や琉球の文化について思いを馳せたい。多様であるべき文化を権力的にマジョリティの文化へ統合するようなことは国際的な人権保障の観点からも許されることではないことを銘記して、この変化を受けとめたいと思う。

本書は専門を異にする三人の研究者によって執筆された。それぞれの専門とする視点から多文化社会を捉えていることから、それぞれの領域の術語が用いられている。多文化社会を捉えるためには常に複合的な視座が必要であり、単一の学問体系のみでは捕捉しきれないことをご理解いただき、学際領域、あるいは他学の術語をも学ぶ、ささやかな努力を読者諸氏にお願いしたいと思う。

知は力であり、言葉は力である。この言葉を前に、読者諸氏とともに、私たちもまた学びを進めていきたいと思う。
2019年6月23日 沖縄慰霊の日に」 



裏表紙のシーサーの写真は僕が撮影しました
建築・意匠系出身としてとても嬉しいです


2019年9月5日木曜日

足立六大学 学長会議が開催されました

本日は、学長、両学部長、EM局長、地域連携を取り仕切る事務方に随伴して、足立区六大学学長会議に出席して参りました。

足立の六大学とは、本学、東京藝大、帝京科学大、放送大、東京電機大、そして新たにキャンパスを設置する文教大を指します。足立区が大学を誘致して区の付加価値を高める施策を展開した結果、6つの大学がやってきて、区の雰囲気がガラリと変わったと評判なんです。そう、かねてからの持論ですが、大学は万能の地域資源なんです。

わが学長のプレゼンは素晴らしかったです。
何が素晴らしいかというと、区から示された7分の枠をしっかり守って効果的なプレゼンをなさったからです。学会発表等で鍛えられたお力を垣間見させていただきました。学会発表でも制限時間を超えてペラペラ自分の舌に酔ってる輩をよく見ますが、我が学長はさすがでした。ルールを守る、大切なことだと思います。

各大学の地域連携のあり方や今後の方向性がよくわかり、とても参考になりました。
さまざまな協働・協創のあり方を模索していますが、藝大の先生と、つながりを深めて拡げていきましょう、学外のNPOにも協働・協創の輪を拡げましょうという方向性を確認できたことは収穫でした。


地域連携センター長はなかなか多忙な職です

2019年9月4日水曜日

福井フィールドワークを終えました

福井といえば幸福度No.1の県。
でも、この統計、意外と浸透してないんですよね。ちょいと福井県からの引用になりますが、このように。

(一財)日本総合研究所が発表した『全47都道府県幸福度ランキング2018年版』において、福井県は2014年、2016年に続き、3回連続で幸福度日本一と評価されました。

研究機関や大学等の調査から「幸福度日本一」と評価されている福井県。髙い教育水準や良好な経済・雇用環境、子育てしやすさなど、客観的な指標を基に評価されています。 

幸せの素1 働く場が豊富
有効求人倍率は全国トップクラス。正規就業者や女性の就業率も全国1位です。

幸せの素2 子育て支援が充実
共働き率全国1位。子育て世帯への支援が手厚く、仕事と子育てを両立できる職場づくりを進めています。

幸せの素3 つながりの強い福井の家族
持ち家率は約8割と住環境に恵まれ、3世代同居率は全国トップクラスです。

幸せの素4 学力・体力日本一
福井の子どもたちは、全国学力テスト、全国体力テストでトップクラスと文武両道です。」

素晴らしいですよね。


でも若干、気になることが。それは近年の福井県における不登校児童・生徒の増加です。
たしかに福井県は学力テストで常に首位あるいは首位を争う県です。今回のヒアリング調査でも、福井県内の学校の先生の授業力は皆さんが礼賛していました。


一方で、かなりカッチリした教育の風土のようで、そうした環境によって学力テスト上位県であるとしたら、その環境からこぼれてしまった児童・生徒はかなりやるせない気持ちになってしまうだろうな、と考えながらのフィールドワークでした。


今回、子どもと接するNPOの代表の方、大学教員、行政職員の方、不登校経験者からお話を伺い、「幸せの素4」が生み出す地域課題を把握できたような気がします。


幸福度No.1、それは統計上そうなのですが、僕はその栄光の外にある影に光を当てたいと思うのです。すでにこの課題に向き合って奮闘なさっているNPO福井スコーレや、もっと根本的な子ども観の転換を図ろうと試みる福井県子どもNPOセンターのような先駆的な実践が始まっています。この波をもっと大きなものに育てる必要を感じました。


僕は、沖縄、群馬、足立で実践を重ねてきましたが、福井での実践も視野に入れていきたいと思います。それは大学教員・研究者という立場ではなく、一市民としての関わりにな
るかもしれません。学力テストで「トップクラスの県」という学校環境でつらい思いをしている子ども、あるいは学校に行かないという選択をしている子どもに寄り添い続けている福井の同志の力になりたいとの思いが募るフィールドワークでした。


地域の教育力で新たな翼を得た子どもが福井に残り、あるいは福井に帰って、まちをつなぐ力になれることを願いつつ、関わりを強めていきたいと思います。


またのー、福井。

蘇らせてみたい福井市街の商店街