2019年5月20日月曜日

保育士・幼稚園教諭志望者のキャリア形成について

先日、保育士・幼稚園教諭志望の学生と話す機会を得ました。

資格取得のために結構ガンジガラメの学生生活なんですよね。非常勤先の大学でも学生からの相談を受けるので、彼の状況は聞かずともよく理解できる内容でした。

資格取得の勉強だけではありません。
彼らが安定的した雇用を得ようとすると、どうしても公立の保育所あるいは幼稚園を視野に入れねばならず、必然的に公務員試験受験を前提とした学生生活になるので、超多忙な学生生活にならざるを得ません。このように、学費等のためにアルバイトをしたいと思ってもできない学生もいるので、奨学金給付(貸与じゃないよ)の枠を広げてほしいと切に思います。

と同時に、保育士・幼稚園教諭以外のキャリア形成についても視野を広げることのできるキャリア教育が必要だと思うのです。

たとえば、私が関わってきた中学校社会科・高校公民科教諭志望者の一部は、市役所・町役場の職員になっています。彼らは、社会科教員として学ぶ地理・歴史・公民の知識を、公務員試験(行政職)における人文科学(日本史・世界史・地理・思想)と社会科学(法律・経済・政治・社会)という試験科目の勉強に転用し、公務員試験を突破していきました。

教員採用試験を落ちてしまってやむなく公務員試験受験へ向かった学生も、僕の教職課程用の講義を利用して当初から公務員受験を目指していた学生も、それぞれいます。僕が心がけていたのは、そうした他のキャリアにも視野を広げることのできる講義でした。

これらのことから、キャリア形成について、特に公共キャリアについては、諸制度に精通したキャリア・カウンセリングが求められていると思うのです。

保育士・幼稚園教諭志望者にも、そうではない未来を想定させることのできるような、選択肢を広げるキャリア教育が求められているように思います。

その学生は「いつか自分が絵本を書いてみたい、それを子どもに読み聞かせたい」という夢を語ってくれました。その夢を実現させるためなら、彼の学びのモチベーションは上がるでしょう。保育園や幼稚園でのボランティアや実習だけでなく、彼の創作能力を伸ばし、絵本を出版するならば今何を学ぶべきかを考えさせ、何を学ぶのかを選択させるキャリア教育が必要でしょう。

僕が大学生の頃は、学部や専攻がどうあれ、なりたい自分になるためにその道を探し出す自由があったように思うのですが、今は既定の線路に沿った電車にガタゴトとそのまま卒業まで乗せられていってしまう教育になっているような。

もちろんそれは合理的であるのでしょうが、学生がその線路をから逸れようとするとき、離反者のスティグマを押されてしまうような不自由さはいかがなものかと思うのです。

さて、数週間後にその学生との面談を予定していますが、今後の学習についてフォローできる用意があることを伝えようと思っています。

行動の伴わない知識などありえませんぜ(知行合一・陽明学)
大塩平八郎は偉かった